【舩越園子コラム】今度は、勝てるように
2014年02月03日
首位と3打差で最終日を迎えた松山英樹のスタートホール。フェアウエイからの第2打はピン1.5メートルにぴたりと付いた。
その様子を見たとき、ふと思った。これが、とても大事なパットになる。この日の行方を占う大事な一打になる。だから、息を殺しながら、この日の彼のファーストパットを見守った。
このパットをそれほどまでに凝視したのは、たぶん12年マスターズ最終日が想起されたからだ。なぜ、あのマスターズを思い出したかは、自分でもよくわからない。あのとき優勝したバッバ・ワトソンがこの日も首位にいたせいか、それとも出だしのパットがあのマスターズもこの日もほぼ同じ1.5メートルの距離だったせいか。
ともあれ、あのオーガスタの1番であのパーパットを外したとき、松山は「あれっ?」という違和感を感じ、自分のパットの何かがおかしいという感覚が、彼のその後のアプローチの感覚を狂わせ、ショットの感覚を狂わせ、すべての流れが乱れに乱れて「80」を叩き、悔し涙を流した。
あれから歳月が流れ、プロになり、日本で優勝の味を知り、そして米ツアー選手になって今季に挑んでいる松山だ。たとえ今日、ファーストパットに違和感を感じたとしても、もはやあのときのように崩れることはないだろうとは思った。だが、大事なラウンド、大事な最終日のスタートホールのパットの意味合いは、以前も今も変わらないはず。そう思えたからこそ、今日の彼のファーストパットをドキドキしながら見つめていた。
そのバーディパットはカップをかすめて80センチほど前方へ通過していった。せっかく作り出したチャンスを逃し、パー発進。それが、この日のすべてを占うものにならないでほしいと願った。(テーラーメイドR1ブラックドライバー)
そのとき、松山自身も「スタートホールからパターがおかしかった」と感じていたという。「途中で調整できたかなと思ったけど、できなかった。それが、ここ一番のチャンスでうまく打てなかった(原因だった)。思い通りに打ったと思ったものが入らなかったりしてストレスが溜まった」。
この日、ショットは決して悪くなかった。グリーンを外したホールでは、小技で補い、パーを拾った。「でも勝てなかった。結果として勝てなかったです。勝てないのは勝てないなりの理由がある、それを突き詰めていかないと勝てない」
勝てないなりの理由――最終的に松山の初優勝を阻止してしまったのは、彼が日頃から最大の武器としているパットだった。「パターは徐々に悪くなっていった。最後の方で入らなかったのは、自信を持てなかった証拠。14番、15番で取れなかったのが16番のグリーン(ボギー)につながった。17番もチャンスを逃した。チャンスで入らなかった」
それが「今日の自分」であり、「今の実力」であると松山は厳しく分析した。だが、出だしの違和感によって崩れることなく踏みとどまり、攻勢に転じるタイミングを虎視眈々と狙った「今日の松山」の成長は頼もしい。
3位になった今季開幕戦のフライズコム・オープン最終日は好スタートを切りながらラウンド半ばのボギーで失速し、「最後まで勢いを続けられなかったのはすごく残念」と唇を噛んだ。が、あれからわずか4試合目の今大会は、スタートでやや躓いても耐え忍び、上を行く選手に着実に近づく展開を見せた。それは松山が初優勝に着実に近づいた証。(スライダードライバー)
「チャンスは間違いなくあった」
そう、チャンスはあった。
「でも勝てなかった」。
そう、勝てなかった。けれど、勝てずとも成長は著しい。本当はギアを入れ替え、入れ直し、優勝へ向かってまっしぐらに邁進してほしいし、したいところだが、松山が浮足立つことはない。
「ギアを入れてからパターが入るわけじゃない、できることはやる。今は勝てなかった。今度からは勝てるようにやっていく」
その様子を見たとき、ふと思った。これが、とても大事なパットになる。この日の行方を占う大事な一打になる。だから、息を殺しながら、この日の彼のファーストパットを見守った。
このパットをそれほどまでに凝視したのは、たぶん12年マスターズ最終日が想起されたからだ。なぜ、あのマスターズを思い出したかは、自分でもよくわからない。あのとき優勝したバッバ・ワトソンがこの日も首位にいたせいか、それとも出だしのパットがあのマスターズもこの日もほぼ同じ1.5メートルの距離だったせいか。
ともあれ、あのオーガスタの1番であのパーパットを外したとき、松山は「あれっ?」という違和感を感じ、自分のパットの何かがおかしいという感覚が、彼のその後のアプローチの感覚を狂わせ、ショットの感覚を狂わせ、すべての流れが乱れに乱れて「80」を叩き、悔し涙を流した。
あれから歳月が流れ、プロになり、日本で優勝の味を知り、そして米ツアー選手になって今季に挑んでいる松山だ。たとえ今日、ファーストパットに違和感を感じたとしても、もはやあのときのように崩れることはないだろうとは思った。だが、大事なラウンド、大事な最終日のスタートホールのパットの意味合いは、以前も今も変わらないはず。そう思えたからこそ、今日の彼のファーストパットをドキドキしながら見つめていた。
そのバーディパットはカップをかすめて80センチほど前方へ通過していった。せっかく作り出したチャンスを逃し、パー発進。それが、この日のすべてを占うものにならないでほしいと願った。(テーラーメイドR1ブラックドライバー)
そのとき、松山自身も「スタートホールからパターがおかしかった」と感じていたという。「途中で調整できたかなと思ったけど、できなかった。それが、ここ一番のチャンスでうまく打てなかった(原因だった)。思い通りに打ったと思ったものが入らなかったりしてストレスが溜まった」。
この日、ショットは決して悪くなかった。グリーンを外したホールでは、小技で補い、パーを拾った。「でも勝てなかった。結果として勝てなかったです。勝てないのは勝てないなりの理由がある、それを突き詰めていかないと勝てない」
勝てないなりの理由――最終的に松山の初優勝を阻止してしまったのは、彼が日頃から最大の武器としているパットだった。「パターは徐々に悪くなっていった。最後の方で入らなかったのは、自信を持てなかった証拠。14番、15番で取れなかったのが16番のグリーン(ボギー)につながった。17番もチャンスを逃した。チャンスで入らなかった」
それが「今日の自分」であり、「今の実力」であると松山は厳しく分析した。だが、出だしの違和感によって崩れることなく踏みとどまり、攻勢に転じるタイミングを虎視眈々と狙った「今日の松山」の成長は頼もしい。
3位になった今季開幕戦のフライズコム・オープン最終日は好スタートを切りながらラウンド半ばのボギーで失速し、「最後まで勢いを続けられなかったのはすごく残念」と唇を噛んだ。が、あれからわずか4試合目の今大会は、スタートでやや躓いても耐え忍び、上を行く選手に着実に近づく展開を見せた。それは松山が初優勝に着実に近づいた証。(スライダードライバー)
「チャンスは間違いなくあった」
そう、チャンスはあった。
「でも勝てなかった」。
そう、勝てなかった。けれど、勝てずとも成長は著しい。本当はギアを入れ替え、入れ直し、優勝へ向かってまっしぐらに邁進してほしいし、したいところだが、松山が浮足立つことはない。
「ギアを入れてからパターが入るわけじゃない、できることはやる。今は勝てなかった。今度からは勝てるようにやっていく」
Posted by 藤田麦子 at 12:03│Comments(0)